柏駅周囲の商業地域の地価とその特性について
柏市の商業地ってもしかするとあまりイメージが湧かないかもしれません。
地価は千葉県内でどの程度に位置するのでしょうか。
概略的にはなりますが、少し解説したいと思います。
今回は、JR常磐線、東武アーバンパークライン(野田)線の柏駅を中心にお話します。今、注目のTX線「柏の葉キャンパス」駅はまたの機会に譲ります。ただ、柏の葉キャンパス駅周囲の商業施設は「ららぽーと」や「三井ガーデンホテル」、その他飲食店舗が数件程度しかありませんので、商業エリアとしてはまだこれからの街という印象です。ちなみに柏の葉T-Siteは国道沿いなので、駅から比較的近くではありますが駅周囲の商業エリアに立地するとは言えませんね。
つたない地図で申し訳ありませんが、柏駅周囲の商業エリアは下図のような感じです。
柏駅周囲の商業地について地価公示がどんな価格をつけているか述べてみたいと思いますが、みなさんは地価公示というものを聞いたことがありますでしょうか。
たまにテレビのニュースで、銀座の山野楽器の前の地価の話をしているのを思い浮かべていただければイメージは湧きやすいかもしれませんね。
ただ、テレビでは他に国税の路線価の発表や、都道府県地価調査の発表でもニュースにしますので、その中の一つと覚えて頂ければと思います。
地価公示は、一年に一回、国土交通省が1月1日現在の地価を日本全国26,000地点について発表するものです。発表は3月後半に行われています。
私は千葉県の東葛地域のうち、柏市、野田市を担当しています。現在、平成30年の地価公示業務を行っている最中です。当然、現在行っている業務内容については発表まで秘密にしなくてはいけないので言えませんが、以前、何回か賃料や空室率等を実地調査しておりましたので、それに基づき解説させて頂きます。
なお、平成29年の柏市の地価公示については、以前ブログで「柏市の2017年地価公示価格(住宅地)」と題して述べさせて頂いておりますので、ご参照下さい。
http://ogawa-asset.com/consultingblog/2017/03/27/363/
地価公示で日本一高い地点は、先ほど例示した銀座の山野楽器です。
29年1月1日現在で、50,500,000円/㎡(坪約1億7千万円)、上昇率が+25%です。
では、柏市で一番高い商業地の地価公示価格はどんなものでしょうか。
柏市の商業地で一番高いのは、柏5-1というポイントで、柏駅東口のハウディモールに面する駅徒歩2分に位置し、店舗・事務所ビルが存在しています。
ここで、29年1月1日現在、1,530,000円/㎡(坪約5百万円)という価格がついています。
銀座に比べると1/34の価格です。まあ、銀座と柏ですからそんなものかなと思えますね。
ただ、価格比はともかくとして、上昇率が全然違います。銀座は25%の上昇ですが、柏は1.3%です。上昇率まで桁が違うというこの状況は、銀座と柏という距離的にはそれほど遠くないですが、価格推移が全く異なる地域となっていることがよく分かります。
そして実態として言えるのは、J-REITをはじめとする不動産ファンド関連会社が、柏駅前の事務所ビルや店舗ビルをあまり買っていないという事実があります。一部のファンド系が購入しているものも散見されますが、J-REITではまだありません。これは、柏駅周囲に規模の大きいビルが少ないことからそんな状況になってしまっているのかもしれません。
J-REITの物件では、柏市はどちらかと言えば賃貸マンション等の住宅系がメインで、その他、今一番熱くなっているのは国道16号エリアの物流系不動産です。正直申し上げると、柏市内においては、住宅、商業系よりも物流系の利回りが一番低い状況になっています。
(物流系はもの凄いことになってきているので、別の機会に詳細をお伝え致します)
ただし、ファンド系が規模の小さい事務所ビルや店舗ビルも買うようになると、柏駅周辺商業地の価格も急激な上昇を見せる可能性は否定できません。
ここで一つ、現在の柏駅周辺の商業地域の特徴を述べさせて頂きます。
それは、ハウディモールや一番街等の限られたエリアでの路面店舗(1階)の賃料が凄く高いということです。ハウディモールの駅寄りのエリアでは、坪3~4万円程度、一番街では坪5万円を超える場合もあるようです。
これって凄くないですか?都内でも銀座や渋谷等には及びませんが、先ほど地価が34倍という話をしましたが、銀座と比べても賃料はせいぜい10倍程度です。都内でも1階店舗で坪5万円ですと秋葉原辺りでも借りられるような水準です。
原因としては、駅乗車人数(JR、東武合計)が19万人/一日を擁する割に、柏駅周辺で繁華な商業エリアの範囲が狭く、極めて高い賃料が取れる限られたエリアと、それど高い賃料が取れないエリアが明確になっている点が挙げられます。高い物件はテナントの入替は順番待ちで、特に飲食店舗の需要が高いようです。
ただ、高い賃料を取れるエリアは限られているため、平均で見ると以下の表の通り、柏市の1階店舗賃料の順位は4位にとどまっております。
上記は市の平均単価となっていますので、柏駅周辺にそのまま当てはまる訳ではありませんが、全体の相場感としてこんな感じかなと思えます。
では、公示地価の順位を見てみましょう。
なんと柏市の商業地は千葉県内で一番になっています。
この柏5-1というポイントが前述通り、ハウディモール沿いの中でも駅に近く、高い賃料が取れる限定的なエリアに位置しているため、このように点で把握しようとすると柏市が1位という状況になっています(上記賃料の順位は平均値なので面的把握ですね)。しかし、誤解しないで頂きたいのは、同じ柏駅周辺でも高い賃料が取れないエリアもありますので、当然、そのようなエリアの地価は低めに出てきますので注意が必要となります。
以前、柏市の住宅地域の特徴でも述べましたが、商業地については、柏駅周辺では地価が下落しているエリアは無いものの、柏そごうが閉店し、再開発ビルが竣工した影響で人の流れが変化しており、そごう跡地周辺の商業地域はやや厳しい状況に、柏駅南口周辺はより人通りが増加している状況となっております。今後は、そごう跡の利用がどうなるか、西口の再開発がどのようになっていくかによっても、柏駅周辺の商業地域の位置関係が変化していくものと思われます。
では、事務所の賃料はどうなっているでしょうか。下記表をご覧下さい。
オフィスについては、柏駅に特に強味はないようです。
上記表の根拠はやや流動的な数値ではありますが、柏市は千葉県内で5位という状況になっております。
柏市のオフィスとしての立地は、都内に近いことが災いしやや中途半端で、保険会社や証券会社の支社としての需要はあるものの、一般企業の支社としての需要はやや弱いエリアではないかと思われます。
その他の需要については、郊外であるため学習塾の入居が目立ち、三井ガーデンホテル跡地については学習塾のビルと通信制の高校が入居したビルが新築されました。
以上から、柏駅周辺の商業地域は、一部エリアで1階路面店舗需要が非常に高いため、高い賃料が収受可能なエリアが存在し、その他エリアについては、他の千葉県エリアと比較して特段特徴を持たない状況となっているようです。
同じ柏市内の商業地、住宅地とも、その立地によって地価が形成されるため、価格を把握する必要がある場合には現状の特性をよく理解する必要がございます。また、今後、ファンド系が小規模ビル等も視野に入れると、商業地の価格が高騰する可能性もあるので、この点、ご留意して頂ければと思います。
個人的な印象としては、柏駅周囲の商業地の地価はまだ上がる余地が残っているように感じます。千葉県内では一定の規模を擁する街ですし、その割に都心のファンド系からはまだあまり注目されていないような印象がございます。
商業地の地価はちょっとしたことが契機に変化する場合もありますので、今後もより一層、注視していきたいと思っております。